vol.15 オーストラリア・バレエ団「白鳥の湖」

オーストラリア・バレエ団2007年日本公演「白鳥の湖
出演:カースティ・マーティン、ダミアン・ウェルチ、ルシンダ・ダン、オーストラリア・バレエ団
振付:グレアム・マーフィー
演奏:東京シティフィルハーモニック管弦楽団

斬新な「白鳥」でした。オデットは一幕から出てるし、ロットバルトの代わりに
オディール(ロットバルト男爵夫人)が活躍します。

結婚式前夜、オデットは、婚約者ジークフリート王子の愛情に不安を覚える。
結婚式の後、愛する新郎の心が実はある男爵夫人のものだったことに気づく。
激しく傷ついたオデットは悲嘆にくれ、ついにサナトリウムに入院させられてしまう。
心を打ち砕かれたオデットが唯一安らげる場所は凍りついた夢の世界だった。
そこでは彼女によく似た、白鳥のような乙女たちが、高ぶる気持ちをなだめてくれた。
そしてそこでなら、束の間ではあってもジークフリートが彼女だけを愛してくれるように
思えるのだった。
男爵夫人が催した夜会に来るはずのないオデットが突然現れた。彼女の淑やかな美しさ、
まじりけのない純粋さに動かされ、ジークフリートは彼女を深く愛するようになる。
嫉妬した男爵夫人はオデットをサナトリウムへ戻そうとするが、捕らえられる寸前に
オデットは闇の中へ逃げさっていく。
ジークフリートはようやく湖畔で恐怖に慄くオデットを見つけた。短い時間、二人は
目もくらむような抱擁で一つに結ばれる。しかし、たとえ夫の腕に抱かれていても
自分の傷ついた心が癒される日は決して来ないことをオデットは悟る。もはや白鳥の
暗い湖の水底にしか、永遠の安息の場所は見出せなかった。
ジークフリートはその後の人生で二度と誰かを愛することなく、失ったオデットを
悼んですごした。

パンフレットからあらすじを抜粋してみました。これを読んだだけで誰もが思い
浮かべるであろう人がいますよね。故ダイアナ妃です。それも十分に意識して
振付されているようでした。音楽的にはまずチャイコフスキーの原点版に戻し
各国の民族舞踊などはカット。花嫁選びもカット。かなり大胆な演出です。
3幕に踊られる、いわゆる「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」も1幕に出ました。
2幕の白鳥たちのシーンはやはり幻想的できれいでしたね。特に王子とオデットの
アダジオ。これをきれいでなく振付けるのはむずかしいでしょうね。
残念だったのは4羽の白鳥の踊り。プティパ・イワノフ版のパを微妙に残しつつ
改変されていたので、なんだか音楽とちぐはぐでロボットの踊りを見ているよう
でした。2羽の白鳥の踊りが良かっただけに残念です。3幕ではオディールが登場
する代わりにオデットが登場するという逆転の発想でしたが、ジークフリート
心がオデットに向いた後のオディールの嘆きの踊りがよかったです。
1幕は非常に演劇的な内容で、ダンサーにも演技力がここまで求められるのかと
非常に参考になりました。
とても斬新で良い舞台だったと思いますが、やはり私は古典は古典的な演出の
方が好きですね。これはもう好みの問題だと思いますが。