vol.31「第12回世界バレエフェスティバル」Aプロ

ふー、疲れました。1階席だったんだけど、とにかく寒くて寒くて。
予想してたので上着はあったのですが、足まではカバーできなかったです。
途中から膝にかける用の大きなハンカチを出して足を覆ってました。

指揮:ワレリー・オブジャニコフ

管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

ピアノ:高岸浩子

指揮者が初めての人でした。なかなか素敵な方でしたよ。






■第1部■


チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」

振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

マリア・コチェトコワ ダニール・シムキン

前評判が高いシムキン、初見だったので少し期待しながら見ましたが、人気があるのわかります。綺麗で高いジャンプ、軸が真っ直ぐでずれないので安定感のある回転、若くて元気だけど力任せにしない丁寧な踊り。ア・ラ・スゴンド・トゥールなんて4回転から入って合間に3回転を織り込んでました。まだ若い(確か22歳)のに、いい踊りするなぁ。がむしゃらにテクニック、っていうのじゃないところがいいです。

くるみ割り人形」より "ピクニック・パ・ド・ドゥ"  

振付:グレアム・マーフィー/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

ルシンダ・ダン ロバート・カラン

えーっと、曲は「葦笛」。この一曲だけ。そして19世紀風な長い衣装でピクニックらしい。抱え上げたりするたびに、ダンが重そうでカランに同情。いや、カランのテクがないのか?
ピクニックに来て昔を思い出して踊っていたら雷鳴とともに雨が降り出したので慌てて帰る。それだけでした。

「海賊」

振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ

マリアネラ・ヌニェス ティアゴソアレス

抑制の効いた端正な海賊。ってあまり「海賊」のイメージじゃないですね。随分紳士的な海賊でした。男性のたくましさや力強さを発揮するPDDだと思うのですが、ちょっと王子様っぽかった。でもこういうのも嫌いじゃないですけどね。ヌニェスはコーダのフェッテの前半をうっかり回りすぎて4回転してました。シングル−ダブルとかシングル−シングル−トリプルとかやるとタイミングがずれるんですよね。

「エラ・エス・アグア ‐ She is Water」

振付:ゴヨ・モンテロ/音楽:コミタス、クロノス・カルテット

タマラ・ロホ

水と言われても……。下手に直径2mくらいの円があり、そこに総タイツオペラレオタード姿のロホ。うごめくうちに上手上空から衣装が降りてきてロホが纏う。活き活きと動き出すが最後はまた下手の円(池や湖のイメージ?)の縁に座り込み水面を見つめる。
ロホに振付けられた作品らしいけど、彼女のよさをひきだしたとは思えないなぁ。

くるみ割り人形

振付:レフ・イワーノフ/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

ヤーナ・サレンコ ズデネク・コンヴァリーナ

うーん。可もなく不可もなく。綺麗で丁寧だったけど、あまり感動はなかった。

コッペリア

振付:アルテュール・サン=レオン/音楽:レオ・ドリーブ

アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー

軽やかで可憐でかわいらしいコジョカルと若々しいコボー。さわやかなコンビで清々しい。
日本でも人気の高いコジョカルだけに、拍手も大きかったです。






■第2部■


「ジゼル」より第2幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジャン・コラーリ、ジュール・ペロー/音楽:アドルフ・アダン

上野水香 マチュー・ガニオ

水香はドンキのキトリのイメージ。あるいは白鳥や黒鳥でもいい。でもジゼルはないなぁ。一幕ならまだしも二幕だし。精霊の雰囲気はなくって、死にかけのマルグリット(@椿姫)みたいな人間ぽかった。最後のアレグロは急に元気になってミルタぽかったし。

「クリティカル・マス」

振付:ラッセル・マリファント/音楽:リチャード・イングリッシュ、アンディ・カウトン

シルヴィ・ギエム ニコラ・ル・リッシュ

ボタンを外して襟元を開け、袖をまくったシャツ。細身のズボン。裸足。ル・リッシュは口髭。いくつかのピースの反復。少しずつ変化しながら反復。増大しながら反復。かっこいいけど、これはバレエと言えるのか?ギエムとル・リッシュがやる意味があるのか?
私はギエムのテクニックと美しい身体のラインと豊かな表現力が好きだ。この作品にはそのどれもない。正直好きではない。こんなものばかりならギエムから離れるかも。

「ライモンダ」より第3幕のパ・ド・ドゥ

振付:マリウス・プティパ/音楽:アレクサンドル・グラズノフ

マリア・アイシュヴァルト フィリップ・バランキエヴィッチ

上品で美しいPDD。貫禄があってよかったです。空中姿勢や着地が美しい。

スカルラッティ・パ・ド・ドゥ」(「天井桟敷の人々」より)

振付:ジョゼ・マルティネス/音楽:ドメニコ・スカルラッティ

アニエス・ルテステュ ジョゼ・マルティネス

相変わらず美しいペア。ピアノの生演奏に合わせて夢のような世界を見せてくれました。

「ディアナとアクティオン」

振付:アグリッピーナ・ワガノワ/音楽:チェーザレ・プーニ

シオマラ・レイエス ホセ・カレーニョ

2部で一番盛り上がりましたよ。カレーニョは客席を盛り上げるのがとてもうまいから。彼自身の踊りはいつもよりも高さがなかったりキレが悪かったりしたけれど、レイエスをサポートして回らせるところなんて「いつもより余分に回しております〜」とでも言いたげにぐるぐる必要以上に回してました。
しかし、カレーニョはどこか調子が悪いのかしら?

オテロ」 

振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:アルヴォ・ペルト

エレーヌ・ブシェ ティアゴ・ボァディン

勿論シェイクスピアの悲劇を下敷きに作ったらしいけど、これがどこの場面なのか誰なのかがわからない。ボァディンの腰に巻いた布をブシェが解き、やがてブシェの腰にボァディンが巻く。のだけれど、そのときボァディンの下半身はTバック状態で、きりりと引き締まったお尻が美しかった。






■第3部■


「椿姫」より第1幕のパ・ド・ドゥ   

振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:フレデリック・ショパン

オレリー・デュポン マニュエル・ルグリ

ルグリが若い!びっくりした。まだこんなパワーが残っていたとは。まるで少年のように初々しくてアルマンってこうなんだなと思いましたよ。オレリーは時々か弱い女性になるけどアルマンをからかって楽しそうなマルグリット。
余談だけど、「デュポン」というとオレリーより先にパトリックを思い浮かべてしまいます(笑)。

「フォーヴ」  

振付:ジャン=クリストフ・マイヨー/音楽:クロード・ドビュッシー

ベルニス・コピエテルス ジル・ロマン

曲はドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。この曲と「Fauves」というタイトルから大体想像できます。ジルが牧神。ベルニスはミューズではなく猫のような動物。コンテ作品はあまり得意じゃないけど、この作品は面白かったです。ジルの牧神は少し間抜けで少し滑稽で少し野生的で少しいかがわしい。そこがいい。ベルニスはコケットでとてもよかったし。

白鳥の湖」より"黒鳥のパ・ド・ドゥ"

振付:マリウス・プティパ/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

スヴェトラーナ・ザハロワ アンドレイ・ウヴァーロフ

ザハロワが足を痛めて(捻挫とか)今朝鍼を打ちに行ったと聞いて心配していました。会場にはアナウンスは何もなかったので、とりあえずは安心していたのですが。細くて身体のラインの美しい、私も大好きなダンサーなのです。
やはりアラベスクなどのポーズをとったときのラインの美しさはピカイチでした。でもフェッテはとても辛そうで。全部シングルだったけど音がすごく速かったせいか前半は先取りだったのに後半は後取りになってたし。コーダの最後のリフトを思いっきり失敗してしまいました。ウヴァーロフが両腕を伸ばしたところまで持ち上げるのが普通なのに肩の辺りで一度止まってしまって。すぐにぐっと本来の位置まで上げたけど。あれはザハロワが踏み切れなくて(踏み込みが足りなくて)なってしまったのじゃないかしら。今日が初日だからがんばったのかなぁ。明日以降、そして今後のために、大事にして欲しいけど。心配です。

「カジミールの色」

振付:マウロ・ビゴンゼッティ/音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ

ディアナ・ヴィシニョーワ ウラジーミル・マラーホフ

正直無理。二人とも好きなダンサーなのに。なぜこの作品?
ヴィシニョーワはちょっと痩せすぎに見えました。セパレートの衣装だったので胸の下から腰まで剥き出しだったのですが、肋骨がくっきり浮き出ていて前かがみになってもお腹は六つに割れたまま。大丈夫かなぁ。元々細い身体だから、あまり痩せると怪我が心配です。

「マノン」より"寝室のパ・ド・ドゥ"

振付:ケネス・マクミラン/音楽:ジュール・マスネ

ポリーナ・セミオノワ フリーデマン・フォーゲル

大好きな作品です。ドラマチックで。ここはまだまだ幸せな愛のシーン。勿論悪くない。いいんだけど、何か足りない気がしました。マノンの無邪気さと妖艶さを併せ持つところが、見られない気がします。まだ無理なのかしら。フェリのマノンは素晴らしかったけど、あれと比べちゃかわいそうだよね。

ドン・キホーテ

振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス

ナターリヤ・オシポワ レオニード・サラファーノフ

最後を飾るに相応しい華やかなドンキでした。やっぱり全幕ではできないような、派手派手なPDDを見たいです。テクニシャンな二人なので盛り上げてくれたけど、少し余裕を持って終わるところなんかたまらないね。フェッテは前半全部ダブル、後半はシングル−シングル−ダブルだったかな。でも音楽にタイミングを合わせるためなのか振り子の足(軸足じゃないほう)の膝が常に曲がったままだったのがダメだ。美しくない。膝を伸ばして軸足のプリエ具合で調節できればよかったんだけど。でもいい終わりでした。






各ペアの後のカーテンコールは今日は全組2回ずつでした。
グランド・フィナーレで拍手が大きかったのはロホ、ギエム&ル・リッシュ、ルテステュ&マルティネス、レイエス&カレーニョ、デュポン&ルグリ、コピエテルス&ロマン、ヴィシニョーワ&マラーホフ、あたり。特にデュポン&ルグリ組が一際大きな声援をもらっていましたよ。


色々、今までとは違う感触があります。これからはちょっとバレエの見かたが変わるかもしれません。