vol.40 「ヴォツェック」

新国立劇場ヴォツェック
【指 揮】ハルトムート・ヘンヒェン
【演 出】アンドレアス・クリーゲンブルク
【合 唱】新国立劇場合唱団
管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団


主な配役:)
ヴォツェック】トーマス・ヨハネス・マイヤー
【鼓手長】エンドリック・ヴォトリッヒ
アンドレス】高野二郎
【大尉】フォルカー・フォーゲル
【医者】妻屋秀和
【第一の徒弟職人】大澤 建
【第二の徒弟職人】星野 淳
【マリー】ウルズラ・ヘッセ・フォン・デン・シュタイネン
【マルグレート】山下牧子

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舞台には大きく二つの設えがある。一つは通常の舞台であるが、床の上に浅く水が張られている。
そしてもう一つ、箱型の部屋が宙に浮いている。この部屋は主にマリーとその息子が住む部屋として
扱われる。その外側は部屋を出た外の世界を表し、時に沼にも酒場にも兵舎にもなる。
宙吊りの箱型の部屋が前後に移動することで舞台は転換される。


所謂「オペラ」という言葉から連想される華やかなものは一切出てこない。
内容は現代的で「社会の底辺の人間が痴情のもつれで起こす殺人譚」(プログラム解説より)である。
音楽はイタリアオペラのような「レチタティーヴォとアリア」ではなく、歌と語りが一体化したような
「シュプレヒシュティンメ」(ワグナー風のシュプレヒゲザングが基礎となっているらしい)。
登場人物もヴォツェックとマリー、その息子の三人以外は異様な姿(猪首でせむし、髪も抜けている)で
気狂いで異形の者ばかりといった風情だ。
正直、オペラを見るのがこれほどしんどかった経験はない。休憩なしで三幕連続上演だったのだが
その場にいるのが苦痛で仕方がなかった。気分が悪くなって、こちらの頭がおかしくなりそうだった。
ストレートプレイならば想像がつくが、オペラと冠されたものでこうくるとは予想だにしなかった。
シーズンで通しのチケットを買っているので行った公演だけれど、この内容だとわかっていたら
正規料金で¥23,100(S席)のチケットは買っていないだろう。
朗々と歌い上げるアリアが連続するオペラにうんざりしている人には面白いのではないかと思う。