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高橋五輪選出の“逆転”はなぜ起きたか “言葉足らず”のフィギュア選考基準
高橋大輔選手は実力も実績もある(ついでに言えばドラマ性も話題性もある)
いい選手だし、選出されたことは理解できるし期待している。
ただ、同じくらい小塚選手の落選が気の毒だし残念でならない。
委員は満場一致で高橋選手を選出したそうだ。
記事では今回の選考基準と前回バンクーバーでの選出基準を比較している。
大きな変更点としては、GPファイナルよりも全日本の結果をより重視する方向
になったことと、

 ※なお、過去に世界選手権6位以内に入賞した実績のある選手が、シーズン前半にけが等で上記(3)の選考対象に含まれなかった場合は、五輪時の状態を見通しつつ、選考の対象に加えることがある。

という文言が外されたこと。
つまりGPシリーズでの活躍度合(高橋>小塚)よりも全日本の成績(高橋<小塚)
を考え、また高橋選手の怪我が実際には考慮されたことなどを考えると
「小塚選手が有利と思われたが、実際はそうではなかった」ということのようだ。
そこが表題の「逆転」という言葉の意味なのだろう。
高橋選手が有利なことを自覚していたら、もっと足をいたわる演技にしたかもしれない。
小塚選手が不利なことを自覚していたら、もっと攻める演技をしたかもしれない。
選考基準が言葉足らずで曖昧だったために、選手に正確に伝わっていなかった
のではないかということだった。
一発勝負の選考会形式ではない場合、どんなスポーツでもこういう事態が起こる。
選手たちのためにも、もっと明快でわかりやすいものになればよいのだけれど。

高橋五輪選出の“逆転”はなぜ起きたか “言葉足らず”のフィギュア選考基準
デイリースポーツ 12月25日(水)17時4分配信
 フィギュアスケート男子シングルのソチ五輪代表選考。残る1枠を争った2人の表情は、一夜にして入れ替わった。
 大会直前に負った右すねの負傷により全日本5位に終わった高橋大輔(27)=関大大学院=と、同3位で選考対象へと浮上した小塚崇彦(24)=トヨタ自動車=。悔しさから男泣きした高橋は、翌日、銀盤の上で喜びの涙を流した。一方で確信したような笑みを浮かべていた小塚は、代表発表後「(選考に)思うところはある」と言い、目を赤く腫らし会場を後にした。
 ただ、選考後に会見した日本スケート連盟小林芳子フィギュア強化部長によると、選手を選考する強化委員会では満場一致で高橋が推されたという。なぜこのような“逆転現象”が起こったのか。
 今回のソチ五輪代表選考で、日本スケート連盟が定めた代表選出方法は次の3点。
 (1)1人目は全日本選手権の優勝者が決定。
 (2)2人目は、全日本の2、3位、GPファイナルの日本人表彰台最上位者を含めて選考する。
 (3)3人目は、(2)で漏れた選手と世界ランク日本人上位3人、ISU公認の今季ベスト日本人上位3人の中から選考を行う。
 ※すべて全日本参加が前提。
 ちなみに4年前のバンクーバー五輪の代表選考基準は次の通り。
 (1)GPファイナル3位以内の日本人最上位者を、その時点で内定。原則として全日本選手権への出場が条件。
 (2)全日本優勝者は、原則として、選考するものとする。
 (3)残る派遣枠については、全日本3位以内の者、GPファイナル進出者、全日本終了時点での世界ランキング日本人上位3人を選考の対象とし、競技会での獲得ポイント、演技内容、世界ランキング等を総合的に比較して、選考する。
 ※なお、過去に世界選手権6位以内に入賞した実績のある選手が、シーズン前半にけが等で上記(3)の選考対象に含まれなかった場合は、五輪時の状態を見通しつつ、選考の対象に加えることがある。
 2つを比べると、変わったのは、主に以下の2点だ。
 ・GPファイナル最上位のメダリストが、内定ではなくなったこと。
 ・総合的、実績、けがなど、実力者の救済を意味するような文言が外されたこと。
 まずソチの代表基準の文面から感じられるのは、全日本の優位性だ。(3)である程度、実績のある選手の救済を意図していることは分かる。ただ。GPファイナルの日本人最上位メダリストの内定がなくなったこと、1人目の選考を全日本優勝者にしたことで、全体的に全日本の成績が優先される印象を与える。
 また、シンプルな条件だけを明記し透明性を高めているようで、逆に言葉足らずとなってしまった。今回、高橋を選出した理由の中には、選考基準の世界ランク、今季ベストだけでなく、基準にはない「五輪時におけるケガの状態」や、「精神的主柱としての役割」なども総合的に考慮されたという。優劣をつける際に必要になる要素を省いたことで、選手にとって、それぞれ自分の「立ち位置」は極めて見えにくくなっていたように感じた。
 故障を言い訳にせず攻めて失速し「終わった」と思った高橋と、全日本3位という結果に可能性を見出した小塚。ともに全身全霊を込めた演技が巻き起こした劇的なドラマだったのは間違いない。
 ただ、もっと明確な基準で己の「立ち位置」が把握できていれば、高橋はあそこまで4回転で攻め、右足にさらに負担を掛けることはなかったかもしれないし、小塚も高橋のベストスコアを上回りにいくなどさらなる“大勝負”に出ていたかもしれない。戦略の選択肢は広がり、双方が納得いく形で決着がついたのではないか。
 フィギュアスケートの一時代を築いたスター選手のほとんどが今季限りでの引退を表明している。4年後は男女ともさらなる混戦となる可能性は高い。フィギュアの競技性から誰もが納得する基準を設けるのは難しいだろうが、より分かりやすく明確な基準を作ってもらいたい。
(デイリースポーツ・大上謙吾)
最終更新:12月25日(水)21時17分