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「障害」を「症」に 精神疾患の新名称公表


従来のDSM-4に代わって、新しい診断基準DSM-5が昨年米国にて策定されていて
その日本語版において言葉の表現を改めるということだ。
例えば「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」は「注意欠如・多動症」に、
性同一性障害GID)」は「性別違和」という呼称に代わるそうだ。
うーん。多くの人が考えた結果なのだろうけど、どうもなじめない。
日本語の「障害」にはとても幅広い意味があり、幅広く使われている。
身近なところでは「バリアフリー」のバリアも「障害、障害物」を意味する。
「impairment(機能障害)」「disability(能力障害)」なども障害と訳される。
今回の例に挙げられた「ADHD」や「GID」の「障害」は「disorder」の訳なのだが、
接頭辞の「dis」は否定や欠如を表し「order」は秩序、順序、整然などきちんと整った状態を意味する。
つまり「disorder」は無秩序や混乱状態、通常の状態ではないことを示す言葉だ。
心身の機能が通常の状態ではないという意味で不調や病気などの場合にも使われる。
GID」は「Gender Identity Disorder」、「性自認(自分がどの性別かの自己認識)が
身体的特徴(生物学的な性別)と一致していない」というもの。
性自認不一致」とかでいいんじゃないかと思うが、「違和」を選んだのはなぜだろう。
改定の理由は「障害という言葉のイメージがよろしくないので差別や偏見を招かないため」
ということのようだけど、これもなんだかなぁと思わないでもない。
一部で「障害ではなく障碍、あるいは障がいと書くべき」という運動があるらしい
ことは知っている。しかしこれらも結局は言葉狩りでしかなく、差別や偏見を
なくすことには対して効果がないと思える。
そもそも「障がい」のような混ぜ書きには反対だし大嫌いだ。
常用漢字ではない文字を含む言葉の場合に、安易に平仮名にするのではなく、
正しく漢字表記したうえでルビを振るべきだと常々思っている。
ニュースの字幕等でも混ぜ書きされると一瞬意味がわからず混乱することがある。
閑話休題
外国語の新たな日本語訳、ということで色々考えていると先人の苦労がしのばれる。
明治の時代、日本にやってきた沢山の新しい概念に対し、どんな言葉がふさわしいか
さぞ頭を悩ませたことだろう。
せっかく新しい言葉を作り出したのだから、曲解せずに素直なまま使われてほしいと思う。

「障害」を「症」に 精神疾患の新名称公表
産経新聞 5月28日(水)19時5分配信
 日本精神神経学会は28日、米国で昨年策定された精神疾患の新診断基準「DSM−5」で示された病名の日本語訳を公表した。子供や不安に関する疾患では「障害」を「症」に改めるなど、差別意識を生まないよう配慮した。
 主な例では「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」は「注意欠如・多動症」に、「性同一性障害」は「性別違和」に変更。「アスペルガー症候群」は単独の疾患としての区分はなくなり、「自閉スペクトラム症」に統合された。
 医療現場では旧版の「DSM−4」などを診断に使い続ける医師もおり、当面は病名が混在する可能性もあるが、学会では「徐々に浸透していくことを期待している」としている。
最終更新:5月28日(水)20時14分