vol.26 「コッペリア」英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団

コッペリア」英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団
出演:吉田都、イアン・マッケイ、ジョナサン・ペイン
振付:マリウス・プティパ、エンリコ・チェケッティ、ピーター・ライト
指揮:フィリップ・エリス
演奏:東京ニューシティ管弦楽団

コッペリア」全三幕を見てきました。バーミンガム・ロイヤルバレエ団は
以前「サドラーズ・ウェルズ・ロイヤル・バレエ団」と名乗っていたところで
吉田都さんが長くプリンシパルを務めていたバレエ団です。いわば古巣ですね。
そのせいか、都さんはとても活き活きと踊っていました。
コッペリア」は発表会でも何度か踊っている作品で大好きです。
初演は1870年と古く、題材となったホフマンの物語は後にオッフェンバック
オペラ化しています。とても古い作品ゆえに、マイムが多用されています。
マイムとは手話のようなもので、さまざまな仕草に意味をもたせ、セリフの
代わりに使うものです。もしこの作品をはじめて観るのなら、事前にストーリー
をよく読んでおくといいと思います。特に「麦の穂」のシーンなど、意味が
わかりづらいと思います。
主役はスワニルダとフランツのカップルなのですが、人形師コッペリウスも
重要な役です。この作品はコミカルなシーンも多く、客席からは笑い声がおきる
こともしばしばでした。
スワニルダ役の都さんは細かいパもきちんと正確に、そしてとても軽やかに
踊っていて、表情もとても豊かでした。第一幕と第二幕はスワニルダはほとんど
出ずっぱりの踊りっぱなしなのです。背中には汗が光っていましたが、顔には
疲れなど微塵も見せず、役になりきって踊っているのはさすがでした。
第三幕の大団円を迎えて一番最後のシーン。全員舞台から去り、一人コッペリウス
だけが残ります。コッペリウスが作った機械人形コッペリアを舞台の中央に運んで
くると、不思議なことにコッペリアに魂がやどり、踊り始めます。このラストシーン
はとても素敵でした。ハッピーエンドです。
日本のバレエ団で東京シティバレエ団の演出では、コッペリウスの夢の場のような
シーンがあります。コッペリアに魂が宿り、コッペリウスと踊るという場面です。
これがとても素敵で、何度見ても泣いてしまいます。丸裸にされて哀れな姿になった
コッペリアを抱いてコッペリウスが嘆いていると、何事もなかったかのようにコッペリア
は美しい衣装に身を包み、微笑んでコッペリウスと踊るのです。
これがコッペリウスの夢であるがゆえに、とても美しくて切ないシーンです。
しかしこのバーミンガム・ロイヤル・バレエ団の演出ではコッペリアが人間になるのは
第三幕の一番最後。きっとこの後はコッペリウスの娘として生きていくのでしょう。
そんな夢を観客に与えてくれます。とてもいい演出だと思います。


今日の席は4列目のセンターブロック。オペラグラスが必要なく、かつ舞台全体を見る
ことができるので、なかなか良い席でした。