ちと考えた

「イキガミ」は星新一作品に酷似と指摘 漫画家側は反論

小学館から発売され9月27日から公開されるTBS製作映画の原作となった漫画「イキガミ」の内容が、星新一の小説「生活維持省」に似ているとして、星新一の次女、マリナさんが18日、小学館に抗議していたことを公式ホームページで明らかにした。小学館側は「『イキガミ』は作者、間瀬元朗氏のオリジナル作品であり、『生活維持省』とはまったく違う創作物」と反論している。



ということなのですが。


私は「生活維持省」は読みましたが、「イキガミ」は知りません。
(そういう漫画があったことも、今度映画が公開されることも、です)
星新一公式サイトに双方の意見が掲載されています。
マリナさんが指摘する両作品の似通った点は以下のとおり。

生活維持省
舞台となる国には、国民の命をランダムに奪うことによって人口を抑制し、それによって国民の生活水準を高め平和を保つという法律がある。その法律を施行する生活維持省に勤める、若くて独身の男性公務員が主人公である。彼は、上司である課長から、その日の死亡予定者の情報が書かれたカードを数枚受け取る。同僚と車に乗って死亡予定者の家へ向かいチャイムを押すと、母親が玄関へ出てくる。公務員が、その家の娘が国家によってランダムに選ばれた死亡予定者であると告げると母親が動揺する。母親は、公務員の説明を聞き、苦しみながらも娘の死を受け入れる。公務員は、この家の娘を殺害しなければならない。


イキガミ エピソード1
舞台となる国には、若い国民の命をランダムに奪うことによって国民に命の尊さを教え、それにより国家の繁栄を保つという国家繁栄維持法という法律がある。その法律を施行するのは、厚生保健省である。「イキガミ」の主要登場人物は、区役所に勤める、若くて独身の男性公務員である。彼は、上司である課長から、その月の死亡予定者の情報が書かれたカードを数枚受け取る。車(タクシー)に乗って死亡予定者の家へ向かいチャイムを押すと、母親が玄関へ出てくる。公務員が、その家の息子が国家によってランダムに選ばれた死亡予定者であると告げると母親が動揺する。母親は、公務員の説明を聞き、苦しみながらも息子の死を受け入れる。この家の息子は、公務員の告知24時間後に事前に体内に埋め込まれたカプセルが破裂して死亡する。



また、マリナさんは以下のようにも指摘しています。

 「イキガミ」には、漫画版の「生活維持省」に似ていると思われる部分がいくつかありますが、その中からひとつ挙げるとすると、「生活維持省」の扉絵と「イキガミ」単行本の表紙です。どちらも公務員が死亡予定者の名前の書かれたカードを片手で持っている絵です。


 小説の「生活維持省」では、公務員は、死亡予定者を光線銃で撃ち殺しますが、漫画版では、公務員は小さな錠剤を死亡予定者に飲ませます。この小さな錠剤を体内に入れるという部分が、「イキガミ」の小さなカプセルを体内に埋め込むという設定に似ているように思います。



それに対し、小学館側が指摘する両作品の異なる点は以下のとおり。

 星マリナさんは『生活維持省』と『イキガミ』の類似点を指摘していらっしゃいますが、弊社は2作品に多くの相違点を感じます。たとえば、『生活維持省』と『イキガミ』の大きな違いの一つに、死亡の24時間前に通告書を渡しに行く(死亡を告げる公務員が自ら手をくだして相手の命を奪うのではなく、単に告げに行く)、という点があります。



イキガミ」を読んでいないのですが、この文字情報から判断すると
小学館側は言い分が弱いように見えます。
「弊社は2作品に多くの相違点を感じます」という割には、挙げられて
いるのは一点のみ。反証としては弱くないですかね。
小学館側は上記の相違点に続けて以下のように書いています。

作者のこの設定により、死亡を宣告された若者が24時間の間に何をするか、どう生きてどう死ぬか、というドラマが生まれます。そのひとつひとつのドラマこそが作者が描きたかったことであり、作者なりに、現代の閉塞した社会を生きる若者に向けて命がけでメッセージを送っているつもりです。そしてそれは、上述したように、国家によって選ばれ、配達人によって召集令状赤紙を渡され、死地に赴かざるを得なかった若者たちが、何を思い、悩み、戦場で死んでいったか、そしてその家族がいかに苦悩したか、という歴史的事実からの着想であり、構造的には設定部分はそこに由来するものです(死亡者の家族への遺族年金、通告書の受け取りを必要とする、といった部分も歴史的事実からの着想です)。



これを読んだ私の印象は「つまり、星新一氏の作品を前提として、
その続きの部分をメインにしたということ?」でした。
小学館側は

イキガミ』作品化の過程で、星先生の『生活維持省』を参考にした、もしくは依拠した事実は一切ありません。また、星マリナさんが同時に指摘された、『生活維持省』の漫画版も、作者・担当者とも読んでおりません。



と主張していますが、作者(漫画家)はともかく、出版社の社員なのに
星新一も読んでないの?誰も?編集長とかも?などと思ってしまいます。


全体の印象として、小学館側の言い分には無理があるなぁと思いましたね。
関係者の中に誰一人として星新一氏の作品を知っているものがいないというのも
ちょっとおかしな感じです。
星新一公式サイトに「生活維持省」の原文(全文)が掲載されていますので
興味のある方はぜひご一読を。