vol.29 「眠れる森の美女」

シュツットガルト・バレエ団「眠れる森の美女」
出演:アリシア・アマトリアン、フィリップ・バランキエヴィッチ、シュツットガルト・バレエ団
振付:マリシア・ハイデ(マリウス・プティパの原典に基づく)
指揮:ジェームス・タグル
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

主な配役:)
・オーロラ姫:アリシア・アマトリアン
・デジレ王子:フィリップ・バランキエヴィッチ
・カラボス:ジェイソン・レイリー
・リラの精:ミリアム・カセロヴァ
配役詳細はこちら
ここで書きかけた内容です)


公演日の第一希望は同じ日のマチネだったのだけれど、希望者が集中している
ということで、第二希望にすることにした。おかげで席はとてもよかったけれど
やっぱりフリーデマン・フォーゲルのデジレ王子も見たかったなぁ。
舞台装置はプロローグ〜第三幕まで、ずっと三方を回廊に囲まれた
しつらえになっている。これは初めて見たが、上空を使うことができるので
舞台に立体感が出てとても良かった。
衣装の色合いがまた良かった。妖精の衣装一つ取ってみても、単純な色ではなく
その上に偏光の生地を重ねたりしていた。刺繍もふんだんに使われていて
○色とは言いがたいきれいでセンスのいいものだった。


今日の出色は何と言ってもカラボス!演出ももちろん良かったのだろうが
レイリーがすばらしかった。妖艶な感じ、怒り、執着、とても活き活きと
したカラボスだった。機会があったら同じ演出で他の人のも見てみたい。
正直主役の二人(オーロラ姫&デジレ王子)よりもずっと良かった。
そう思ったのは私だけではなかったようで、最後のカーテンコールでは
二人を差し置いて誰よりも沢山の拍手と口笛までもらっていた。
会場のオペラカーテンを使わずオペラカーテン風の模様が描かれた緞帳を
使ったので、カーテン前でのレベランスはなかったのが残念。
このカラボスはプロローグと第一幕の幕間で、リラの精に守られながら
成長するオーロラ姫をずっと見ている、という演出が入る。
舞台を遮る白い幕の前に黒い幕を垂らし、それを効果的に使っていたのが
印象的だった。


プロローグの妖精たち。
リラの精を含めて6人、個々の踊りに入る前に全員が出揃ったところで
目を引いたのは3人。リラの精と、歌鳥の精(カタジナ・コジィルスカ)と、
法の庭の精(=トネリコの精、マグダレーナ・ジギレウスカ)だった。
リラの精は上品で清楚、魔法の庭の精はきらきらと華やか、歌鳥の精は
明るく元気で若々しい感じだった。後の3人は正直ぱっとしなかった。
ヴァリエーションを見たらやはりその評価は変わらず。そしてジギレウスカ
は3幕で宝石のルビーを、コジィルスカは白猫を踊ったのだが、これも
とてもよかった。白猫と長靴を履いた猫(アルマン・ザジャン)のPDD
は元々コミカルな振り付けだが、このペアはさらにユーモラスに踊り
会場からも笑い声と沢山の拍手が贈られた。
リラの精はプロローグから第三幕までずっとあるので大変だろうが
もう少しがんばって欲しかった。


オーロラ姫。ローズ・アダージオでアチチュードのままパートナー4人
の手を次々に持ち替えるという有名なシーンで、あわや足を下ろすか、
というところだった。完全にバランスを崩してしまってぐらぐらしていた。
スタイル、特に脚のラインはとてもきれいなダンサーなのだけれど
肝心の踊りがイマイチだったように思う。たまたま調子が悪かった?
このローズ・アダージオのときにサポートする4人の騎士が、この演出では
(東西南北)の王子という設定だった。一人とても素敵なダンサーが
いたのだけれど、プログラムを見ても顔写真がない。プリンシパル
ソリストまでしか載っていないのだ。一人はソリストだったけれど、後の
3人は顔と名前が一致しない。ジョナサン・コープのような感じの人だった。


青い鳥のPDDを踊った二人(ヒョー=チャン・カン、アレクサンダー・ジョーンズ)
も上手だった。こういうところが良いと舞台がきちんとした感じになる。
青い鳥の王女は東洋人体型で頭が大きく手足が短かったのが残念だったが
テクニックはすばらしかった。軽やかで余裕のある踊りだった。


第二幕では王子がオーロラ姫の幻影を見て助けに行く場面が描かれるが、
ここで舞台の後景に出演者らしき子供が座っているのが気になった。
ダンサーが舞台奥に行くとスポットがあたり、その子も明るく照らされる
という状態だった。その服装ではこの幕では出番はないように見えたし。
第二幕のほとんど終わり頃になってようやく居なくなったので、きっと
出番を間違えたのだろう。そして幕が上がってしまい引っ込むことが
できなくなったのだと思う。予想通り第三幕に白雪姫の傍の7人の小人の
役で出てきた。周囲の多くが白人の中で、ありえない場所に日本人の子供
がいたので悪目立ちしていて激しく興ざめだった。


白人のダンサーがほとんどだった(ように見えた)ので、クラシカルな
カツラをつけていても違和感がなかった。日本人がやるとおかしな感じに
なってしまうのだけれど。
そしてカタラビュット(=侍従長、トーマス・ダンヘル)がきりりとした
美しいお顔で、ずっと女性が演じているものだと思っていた。国内の
バレエ団だとはげたおじいちゃんであることも多いのだが、この舞台は
違和感がなく、彫刻の人が動いているような端正な美しさだった。


次回はオネーギン。