vol.30 「こうもり」

新国立劇場「こうもり」
出演:ヨハネス・マーティン・クレンツレ、ノエミ・ナーデルマン、エリザベート・クールマン、他
指揮:アレクサンダー・ジョエル
演出:ハインツ・ツェドニク
合唱:新国立劇場合唱団
バレエ:東京シティ・バレエ団
管弦楽:東京交響楽団

主な配役:)
【ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン】ヨハネス・マーティン・クレンツレ
【ロザリンデ】ノエミ・ナーデルマン
【フランク】ルッペルト・ベルクマン
【オルロフスキー公爵】エリザベート・クールマン
アルフレード】大槻 孝志
ファルケ博士】マルクス・ブリュック
【アデーレ】オフェリア・サラ
【ブリント博士】大久保 光哉
【フロッシュ】フランツ・スラーダ
【イーダ】平井香織
配役詳細はこちら


オペレッタは楽しいし、地のセリフ(オペラのように歌うのではなく、セリフとして
しゃべる)にはアドリブも多いので、日本人向けに随分サービスしていました。
ロザリンデがアルフレードの歌声を聴いて「あの『日本人』テノールの声には弱いの」
と言ってみたり、舞踏会でフランス人に化けたアイゼンシュタインとフランクが何とか
フランス語で会話しようとする中に日本語も取り入れてみたり、刑務官が好んで飲む
お酒を「焼酎!」という設定にしたり。字幕に頼らずに理解できるそういった部分は
客席も大いに沸いていました。


アイゼンシュタインとロザリンデとオルロフスキーがとてもよかったです。
調子のいいアイゼンシュタイン、凛としたロザリンデ、きりりとしたオルロフスキー。
特にオルロフスキーはかっこよくて素敵でした。宝塚にはまる人の気持ちが判る
ような気がします。
アルフレードもちょっと間抜けな間男という感じで、軽やかなテノールが心地よかったです。
アデーレはやや不満かな。1幕の小間使いのシーンがイマイチという感じでした。


ロザリンデの1幕の私服が「往年のハリウッド女優の避暑地ファッション」のようでした。
キモノドレス+ワイドパンツ、みたいな感じ。あの時代にはやったのかしら?
アデーレの小間使いの服は膝下までの長めの丈のすぼまったスカートで動きにくそうでした。
小間使いがあんな服?この辺はちょっと違和感がありました。
男性陣はスーツか燕尾なのでおかしくもないのですが。


バレエを踊ったのが東京シティ・バレエ団というのは意外でした。てっきり新国立劇場
バレエ団がやると思っていたので。チャルダッシュのところでは思わず私もステップを
なぞっていましたよ。バレエはいいなー。


一部を除いてドイツ語の舞台なのですが、やっぱりドイツ語は難しいです。字幕では
表しきれない部分が理解できないともったいないですよね。
舞踏会で二人がフランス人に扮したところでは、知っている単語や短い文だけで
なんとか会話しようとするのですが、さすがにわかりやすくてほっとしましたよ。
ドイツ語がこれくらい理解できればいいのになって。


開演前や幕間に軽食が取れるようになっています。珈琲やワイン、サンドイッチなど。
それが今回はケーキも売っていました。プチケーキが2種類とプチシュー。
せっかくなのでプチシューを食べましたよ。普通においしかったです。


舞台は良かったのですが、客席が、ちょっと。いや座席も良かったのですが。
隣がジジババ(多分ご夫婦)だったのですが、うるさくてうるさくて。
登場人物が別の人間に扮して現れるのがこの舞台の面白いところなのですが、
誰かが登場すると「あ、○○が変装して出てきたよ」「違うわよ、これは××よ」
と会話したり。オルロフスキーは男性の役だけれど女性が演ずることも多いのですが
歌いだした途端に「あれ!これ女の人だよ!」って言ったり。耳が遠いのか、小声では
あるけれどささやき声ではない普通の声。
しかもジジ(私の隣だった)は肘掛から大きくはみ出して腕を置くので何度もつつかれたし、
脚を大きく広げて座った上にたんたんたんと足を踏んでいるし(しかし音楽のリズム
とはずれている)、何度も私の足を踏むし。しょっちゅう座りなおすので後ろの人にも
迷惑だったんじゃないかな。
オルロフスキーを女性が演ずるのはパンフレットを見ていればわかることなのに
(そして持っていたのに)。
しゃべりたいなら家でDVDでも見ていれば、って思うんですよね。せめてささやき程度
ならまだ我慢もしますが、興奮して少し大きな声なんか出されると、本当に興ざめ。
せっかくの良い舞台が少し残念なものになりました。