vol.35「第12回世界バレエフェスティバル」ガラ

まだ昨日の興奮から醒めません。すごかった〜。1F15列センター左ブロック。
とりあえず本編から。

指揮:ワレリー・オブジャニコフ

管弦楽東京フィルハーモニー交響楽団

ピアノ:高岸浩子

チェロ:遠藤真理

配役表(NBSのサイト)






■第1部■


序曲「戴冠式行進曲」 (ジャコモ・マイヤベーア作曲)

出演者一覧の後の「総監督:佐々木忠次」の名前が出るとブラボーの声と拍手。
ちょっと違うんじゃないかと思う。観客を誘導するようなことは嫌いだ。
どうせ本人が後で挨拶するのだからそのときにすればいいのに。

白鳥の湖」第1幕よりパ・ド・トロワ

振付:グレアム・マーフィー/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

ルシンダ・ダン レイチェル・ローリンズ ロバート・カラン

うーん、素敵。以前全幕を見たことがあるけれど、この一場面だけでも夫に省みられないオデットの悲しみがひしひしと伝わってきます。愛人がいるくせに結婚して、しかもその存在を隠すどころか愛人宅に入り浸るなんてひどい男だ。この解釈をしたグレアム・マーフィーってすごい。

カルメン

振付:ローラン・プティ/音楽:ジョルジュ・ビゼー

タマラ・ロホ フェデリコ・ボネッリ

ロホはこのカルメンには合ってないと思った。「FemmeFatale」の魔性が感じられなくて、高飛車で気の強い娼婦というか。ホセがカルメンに惹かれる理由が全く見えなくて。以前見たフェリが素晴らしかっただけに、ちょっと残念。
ハバネラの演奏が随分遅くて気持ち悪かったな。

「ダンス組曲

振付:ジェローム・ロビンズ/音楽:J.S.バッハ

ニコラ・ル・リッシュ

バッハの無伴奏チェロ組曲に振付けられた作品。カザルスによって有名になった、あの曲。
まるで即興で踊っているかのように、舞台の上のチェリストと掛け合いながら踊る。はじめは軽く、だんだん激しく。最後に「もう無理だよ(笑)」って感じで終わる。素晴らしい。また見たい。

「いにしえの祭り」

振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:リヒャルト・シュトラウス

エレーヌ・ブシェ ティアゴ・ボァディン

解説によると「第二次大戦のさなかに繰り広げられる陽気な宴は、実は出征前の最後の宴だった」ということ。
踊りはとても美しくて素敵なんだけれど、実はそれが迫り来る戦争の影におびえる人々で〜っていうのは、この短い踊りだけでは伝わらない。ので、ぜひ全部見てみたい。

「ジゼル」より第2幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジャン・コラーリ /ジュール・ペロー/音楽:アドルフ・アダン

アニエス・ルテステュ ジョゼ・マルティネス

素晴らしい!!アルブレヒトの登場とPDD、ソロ、そして夜明けの鐘がなってジゼルが消えていくシーンまで。音が(音楽が)聞きなれたものとやや違っていたのはなぜだろう?たとえば一番上の管楽器を外したような感じだけど、もっと華やかなアレンジ。倒れこんだアルブレヒトの上にジゼルが投げかけた腕で花占いのマイムをしたのは初めてみた。
ジゼルの漂う空気感、アルブレヒトの悲しみ、二人の愛など、技術面が素晴らしいだけでなく「ジゼル」という作品の世界にあっという間に連れて行かれた。何度も見て、踊って、卒論のテーマにまでした好きな作品でよく知っているのに、胃の下の方から何かがこみ上げてぶわーっと体中に広がり、気づいたら泣いていた。こんなに素晴らしいジゼルは見たことがない。コールドなしで二人しかいないのに、かえって二人の愛の世界がくっきりと際立っていた。これこそクラシックバレエの真髄。この短い抜粋でここまでできるのは、さすがエトワール。






■第2部■




「ジュエルズ」よりダイヤモンド

振付:ジョージ・バランシン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

ディアナ・ヴィシニョーワ ウラジーミル・マラーホフ

バランシンなので淡々と、でも美しく端正に且つ軽快に踊っていた。これは確かな技術があるからこそできる踊り方。

「カンティーク」

振付:モーリス・ベジャール/音楽:ユダヤの伝承音楽

エリザベット・ロス ジル・ロマン

ロマンがユダヤの帽子をかぶり、民族衣装のようなものを身につけていた。ロスは白いゆったりしたドレスにお下げ髪(これも民族衣装?)。いかにもベジャールらしい音楽と振付。初演は20年以上前だけどちっとも古さを感じさせない。

「グラン・パ・クラシック」

振付:ヴィクトール・グゾフスキー/音楽:ダニエル・オーベール

ポリーナ・セミオノワ フリーデマン・フォーゲル

黒鳥のPDDのような衣装で登場した二人。きちんと正しく踊っていてそれはちっとも悪くないのだけれど、こういうお祭りではもう少し華やかにしてもよかったかなと思う。それができる二人なのだから。

「TWO」

振付:ラッセル・マリファント/音楽:アンディ・カウトン

シルヴィ・ギエム

かっこいいけれど、マリファントはもうお腹一杯。どうせなら「ルナ」や「シシィ」をまた見たい。ベジャールとの関係で上演できない理由でもあるのかな。単にギエム自身が飽きただけ?

ソナチネ

振付:ジョージ・バランシン/音楽:モーリス・ラヴェル

オレリー・デュポン マニュエル・ルグリ

舞台の上にグランドピアノを置いて生演奏で踊る二人。デュポンのスタイルが一番良く見える衣装だったと思う。チャイパのようなデザインでデュポンはサーモンピンク、ルグリはブルーグレー。
とても軽やかでさわやかだった。若い二人のための作品かなと思うけど違和感なかった。

「海賊」

振付:マリウス・プティパ/音楽:リッカルド・ドリゴ

マリア・コチェトコワ ダニール・シムキン

客席からの期待が大きい二人、がんばってくれた。シムキンは540を三連続。さらにマネージュの最後でまた540。でもなんとなくBプロ初日に感じたようなエネルギーが爆発する感じは受けなかった。慣れただけ?コチェトコワはフェッテを全部ダブルでやろうとしてた。実際は最後の4小節でシングル−ダブル−シングル−ダブルになったけど。32小節の前半だけダブルとかは見たことあるけれど、全部はさすがに驚いた。カーテンコールでカレーニョの十八番である「ジャンプして幕から登場」をやったシムキンに拍手喝采






■第3部■


ラ・シルフィード

振付:オーギュスト・ブルノンヴィル/音楽:H.S.レーヴェンスヨルド

ナターリヤ・オシポワ レオニード・サラファーノフ

二人ともジャンプはとても高いのだけど、「ブルノンヴィル・スタイルの『ラ・シルフィード』」ではなかったと思う。力任せに踊るのではなく、軽快な脚捌きを見たいのだけれど。最後に幕が下りるのが早すぎ。ポーズの途中だった。

「アルミードの館」よりシャムの踊り

振付:ジョン・ノイマイヤー/音楽:ニコライ・チェレプニン

ティアゴ・ボァディン

踊りはとてもよかっただけに、音楽が生演奏でなくテープだったのが残念。でもおかしな演奏ならきちんとした録音の方がいいのかな。これもまた抜粋でなくちゃんと見たい。

マクベス

振付:ウラジーミル・ワシーリエフ/音楽:キリル・モルチャノフ

スヴェトラーナ・ザハロワ アンドレイ・ウヴァーロフ

ザハロワがひどい悪女に見えたんだけど、マクベスということは夫人だったのか。納得。こういう作品も踊れるとは思わなかった。意外だけどとてもよかった。

ロミオとジュリエット」より "寝室のパ・ド・ドゥ"

振付:ケネス・マクミラン/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

シオマラ・レイエス ホセ・カレーニョ

後朝の別れ。ちょっとロミオが嫌な奴に見える(これはシェイクスピアのせいだけど)。発見されるのを恐れて帰りたがるロミオと別れたくないジュリエット。愛のPDD。ロミオがジュリエットにキスをして、ぼーっとしている間にロミオは消え去る。

「じゃじゃ馬馴らし」

振付:ジョン・クランコ/音楽:クルト・ハインツ・シュトルツェ

マリア・アイシュヴァルト フィリップ・バランキエヴィッチ

「オネーギン」の二人とはまるで別人だった。素晴らしい。おてんばなアイシュヴァルトもかわいいし、それに手を焼くバランキーも愉快だ。こういうコミカルなバレエも上手にこなせるのはすごい。今回一番の演技派。






■第4部■


「パリの炎」

振付:ワシリー・ワイノーネン/音楽:ボリス・アサフィエフ

ヤーナ・サレンコ ズデネク・コンヴァリーナ

大うけしたコチェトコワ・シムキン組のあとで大丈夫かなと思ったけど杞憂だった。きちんと踊っていて質ではこちらの方が上かも。サレンコもアンドゥダンを全部ダブルで回ったり、フェッテでも1回転−1回転−3回転のあとに90度余分に回って四方を向く技を披露していたし。このフェッテ、実はこれだけ派手にやっているにも関わらず軸足の場所が殆どずれていない。そしてからだの軸もまっすぐだった。正確にやった上での派手なテクニック。さすがです。

「三人姉妹」

振付:ケネス・マクミラン/音楽:ピョートル・I.チャイコフスキー

マリアネラ・ヌニェス ティアゴソアレス

ソアレスは身体が硬いと思ったけれど、この役なら違和感がない。軍服も似合っていた。古典の演目では何かが足りない感じのペアだったがこれはいい。ロシアの冬のイメージがよくでている。

「ザ・ピクチャー・オブ」

振付:パトリック・ド・バナ/音楽:ヘンリー・パーセル

マニュエル・ルグリ

しなやかでひきつけられるオーラを発していたけれど、最後のシーンは正面(客席)に向かって悲しげにバイバイと手を振りながら消えていく。これはルグリから観客へのメッセージ?だったらさびしいな。

ロミオとジュリエット

振付:アンジュラン・プレルジョカージュ/音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

オレリー・デュポン ローラン・イレール

仮死状態のジュリエットを見てロミオ自殺、蘇ったジュリエットも自殺、というシーン。激しい振付だ。相手の身体をごろんごろん転がすし、肩に担ぐし。こんな乱暴なのは初めて見た。デュポンは大変だったろう。ロミオは短剣でわき腹?を刺して死ぬのだけれど、そのときに短剣が地面に落ちる。それを使ってジュリエットは手首を切って自殺するのだが、そのリアリティのなさに醒めた。

「春の声」

振付:フレデリック・アシュトン/音楽:ヨハン・シュトラウス

アリーナ・コジョカル ヨハン・コボー

かわいらしい!軽やかでにこやかで、本当にあたり一面が一瞬で「春」になった。両手に握った紙ふぶきをコボーの肩にリフトされたコジョカルが少しずつ撒いたのだけれど、最終的には床に散らばる。それに乗って滑らないかとはらはらした。また怪我したら大変。それ以外の不安要素はなく、その楽しい様子にこちらも笑顔になってしまう。

ドン・キホーテ

振付:マリウス・プティパ/音楽:レオン・ミンクス

上野水香 デヴィッド・マッカテリ

3つのプログラム(ジゼル、黒鳥、ドンキ)の中で一番よかった。水香さんらしい感じで。やっと水香さんの踊りを見た気がする。フェッテはダブルの間に扇を開いて閉じるという技を入れていた。リフトは一度もなし。

フィナーレ 「眠れる森の美女」よりアポテオーズ (ピョートル・I.チャイコフスキー作曲)

と、ここで通常ならフィナーレなのだけれど、突然「スミマセーン!ササキサァーン!」と背の高い片言の御婦人(実はマラーホフ)が登場。ファニーガラに続きます。