vol.38「オマージュ・ア・ベジャール」

今日と明日、出演者違いでこの演目を上演し、世界バレエフェスは終了。
私は明日は行かないので、今日が8月1日から始まったフェスの最終日。さびしいな。

第12回世界バレエフェスティバル 特別プロ
<オマージュ・ア・ベジャール

◆主な配役◆
配役表(NBSのサイト)






■第1部■


「ルーミー」 音楽:クドシ・エルグネル
橋竜太、平野玲、松下裕次、氷室友、長瀬直義、横内国弘、小笠原亮、宮本祐宜、梅澤紘貴、中谷広貴、安田峻介、柄本弾、佐々木源蔵、杉山優一、岡崎隼也、八木進

前を止めずに羽織ったベストとロングスカート、上下ともに白色。
「ルーミー RUMI」とは13世紀イスラムの詩人ルーミーのことで、彼を始祖と仰ぐ教団があり、そこは旋回舞踊を行って修行することで知られる、のだそうだ。
力強く男性陣が踊るとスカートのすそが翻り、大変美しい。(今回、東京バレエ団初演)

「ザ・カブキ」より由良之助のソロ 音楽:黛 敏郎
高岸直樹

すばらしい。あの抑えた動きは歌舞伎や能を知る日本人だからこそできるものだろうか。四十七士のようにルーミーのダンサーが登場。

「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」 音楽:クイーン
エリザベット・ロス

なんと美しい。フレディのパワフルな歌声に全く負けていないロスの踊り。バランスも回転もばっちり決まっているのだけれど、そこが問題なのではない。技術も表現力の一部だと痛感する。

「鳥」 音楽:マノス・ハジダキス
木村和夫

頭巾、ボレロ、ロングスカートを身につけた黒づくめの女性陣。そこに白色の鳥(木村さん)。彼は力強く且つ丁寧にきっちりと踊れるダンサーで、今日も小気味よい踊りだった。

「アダージェット」 音楽:グスタフ・マーラー
ジル・ロマン

何度も見ているが、何度見ても飽きない。また見たいと思う。探し求めたものをやっとその手に掴み、歓喜するが、握った手をゆっくり開き、ふっと息を吹きかけて飛ばしてしまう。そして椅子にもたれる。
思い入れたっぷりに少しずつ手を開いていくこともあるが、今日は割りとあっさり手放してしまった。それから手を顔の前まで持ってきて空に向けて息を吹きかけその行方を目で追い、椅子に寄りかかって放心。マーラーの音楽と、暗闇の中でスポットの当たった椅子と、ジル。この余韻に胸が一杯になる。素晴らしい。






■第2部■


「バクチIII」 音楽:インドの伝統音楽
シャクティ上野水香

シヴァ:後藤晴雄

水香さんも後藤さんもよかった。水香さんはドンキもよかったし、純古典よりもこういうアクの強いものの方があっているのかもしれない。長い脚だけど細かい動きも器用にこなしていた。後藤さんもたくましく存在感のある踊り。

「さすらう若者の歌」 音楽:グスタフ・マーラー
ローラン・イレール、マニュエル・ルグリ

影のような二人の若者。イレールもだけれど、ルグリがいい。細かい脚捌きがとにかく綺麗。ジュテジュテのような小さく速いパでもつま先まできちんと伸びて甲が高く美しい。クラシックの基礎がきちんとできているから、ベジャール作品でもここまで踊れるのだろう。ところでベジャールはコンテ?

ボレロ 音楽:モーリス・ラヴェル
首藤康之
平野玲、松下裕次、長瀬直義、横内国弘

首藤さんのメロディは久しぶりに見た。ギエムのメロディがセイレーンの歌声だとするなら、首藤さんのメロディは竜神か。流れの渦へ誘い込むのではなく、流れの下から渦の中へ引きずり込む感じ。隊列を煽り立てるのではなく、自ら先頭に立って率いるイメージ。力強く、逞しく、燃え滾り、爆発する。客席を巻き込んで。


今回のフェスで初めて、1階席の後方(通路より後ろ)に座りました。
このあたりだと舞台全体が良く見えるので、今日の演目には丁度よかったと思います。特にボレロのように群舞(リズム)もソリスト(メロディ)と掛け合っているものは、全体を見たいですから。
席が前方だとついメロディだけに集中してしまうのだけれど、今日のリズムはとても良かった。きびきびとしていたし、踊りもそろっていた。オペラグラスを使わなくて正解。
第1部、ルグリが一番後ろで見ていましたよ。余裕だなぁ。
第1部はジルがマイクを握り作品を案内してつなげるので、一幕物のようにまとまっていました。「ルーミー」では彼の詩を、他でも作曲家の名前などを言うのだけれど、「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」のときにはフレディ、ジョルジュ・ドン、モーリス……と。虚空に向かって「モーリース!」と叫ぶジルの姿には胸が痛くなりました。
第2部が終わってカーテンコール、円卓の上へリズムたちが手を伸ばし、降りてきたモニターに映っていたのはカーテンコールに応えるベジャールの姿。場内割れんばかりの拍手です。
1F総立ちのカーテンコールは何回も続きました。上階も立っていたかな。偉大なるベジャールへ。


これで私のバレエフェスは終了。あっという間の16日間でした。
Bプロだったかいつだったか、場内でシンシア・ローリーを着た親子連れが目の前にいたので思わず声をかけてしまったことがありました。小学生くらいのお嬢さんもシンシアをサンドレス風に着ていて、とても可愛かった。お母様は落ち着いた印象に着こなしていて。
そのお母様に、今日声をかけられました。「もしかして、あのときの……」って。実は今日着ていたのはこの間お嬢さんが着ていたのと同じ物。ちょっと恥ずかしかった。毎回シンシアのドレスを着ていたけれど、何も同じドレスを着た日に合わなくてもと思って。お二人は今日はシンシアではなかったようです。
お嬢さんもバレエをやっているそうなので、がんばってねと言ってお別れしました。


次回、第13回世界バレエフェスティバルを楽しみにしています。