vol.9 バレエ「第11回世界バレエフェスティバル」Aプロ

「第11回世界バレエフェスティバル」Aプロ
出演:シルヴィ・ギエム、マニュエル・ルグリ、ジル・ロマン他

行ってきました、世界バレエフェス。4時間半の長丁場。若干演目の変更あり。
お客さんも大変です。終わったのが23時近くて私も終電の時間を気にしながら
急いで帰って来ました。忘れないうちにレビュー行きます。


・「ラ・ファヴォリータ」ルシンダ・ダン&マシュー・ローレンス
ドニゼッティの音楽にアッシュモールさんが振付けたらしい。
ドンキかと思うような衣装に派手なテクニック。幕開きにふさわしい演目。
・「7月3日新しい日、新しい人生」ニコラ・ル・リッシュ
ベランガール振付。前評判は高かったようなのだけど、正直コンテンポラは
苦手でよくわかりません。今回が世界初演とか。長くて疲れた。
・「白雪姫」タマラ・ロホ&イナキ・ウルレザーガ
リカルド・クエ振付。クラシカルなグラン・パ・ド・ドゥ。はじめは大人しかった
二人だが終盤盛り上げる。タマラ・ロホがグラン・フェッテで3回転入れたので
観客も沸いてこのペアからカーテンコールが2回になった。お祭りらしい雰囲気に。
・「椿姫〜第3幕のパ・ド・ドゥ」ジョエル・ブーローニュ&アレクサンドル・リアブコ
ショパンの曲にノイマイヤー振付。実は以前フェリが踊ったバージョンが印象深くて
このペアは物足りなかった。マルグリットの切なさを表現しきれてなかったような。
ピアノは生演奏でした。
<intermission>
・「ロミオとジュリエット〜バルコニーのパ・ド・ドゥ」ポリーナ・セミオノワ&フリーデマン・フォーゲル
プロコフィエフの曲だけど振付はジョン・クランコ。マクミラン版の方が好みだな。
バルコニーが上手にあるのは同じだけど階段がセンターから下手側に向かって
作られているのがマクミラン版と違うところ。セミオノワのよさがいまいちわからない。
いわゆる「古典」のほうが合ってるのかな?
・「エスメラルダ」レティシアオリヴェイラ&ズデネク・コンヴァリーナ
以前エスメのヴァリエーションを踊ったことがあるので思い入れのある作品。
身体のラインがきれいでよかった。コーダでグラン・フェッテをやったのだけど
回るまわる。32回転よりもっと回ったんじゃないかしら。トリプル入り。拍手喝采
・「オネーギン〜第1幕のパ・ド・ドゥ」アリーナ・コジョカル&フィリップ・バランキエヴィッチ
これもクランコ振付。手紙を書いているうちに眠ってしまった娘の夢の中のシーン。
鏡の中から恋しい男性が現れて踊りだす。コジョカルの脚のラインはジュリー・ケント
に似てると思う。美しい。華奢でかわいらしい娘だった。リフトがちょっと乱暴。
・「ジュエルズ〜ダイヤモンド」アニエス・ルテステュ&ジョゼ・マルティネス
パリ・オペラ座のエトワールのペア。お祭りイベントなので、割とみんな派手な
テクニックを披露する場にしがちなのに、このペアはさすが。気品とか端正とか品格とか
そういった言葉が良く似合う。バランシンらしさを存分に出しながら、やはりパリ・オペの
優雅さは隠せず。長い手足に整った顔立ち。ため息がでるほど美しかった。
・「白鳥の湖〜黒鳥のパ・ド・ドゥ」イリーナ・ドヴォロヴェンコ&ホセ・カレーニョ
おなじみ黒鳥。もうテクニックどんどん披露してくださいって空気に会場が包まれる。
ホセはやっぱりこれとかドンキとか、派手なのが似合う人だなぁ。
<intermission>
・「扉は必ず・・・」オレリー・デュポン&マニュエル・ルグリ
キリアン振付。デュポンとルグリのために振付けられた作品だとか。フラゴナールの絵画
「閂」にインスピレーションを得て創られた。スローモーションかと思うようなゆっくり
した動きに始まって二人のシンクロ、そして花束のキャッチボールという単調な動きの反復と
その規則性を破る動作で観客の笑いを誘う。私は笑っていいのかわからなかったけど。
カーテンコールが3回あった。
・「眠れる森の美女」マイヤ・マッカテリ&デヴィッド・マッカテリ
眠りのお手本とも言える様なきちんとした踊りだった。マイヤはヴァリエーションで
回りすぎるというちょっとしたミスもあった。マイヤの脚のラインはとっても私好み。
なぜかカーテンコールは1回だけだった。よかったのに。
・「コンティニュウム」ルシンダ・ダン&マシュー・ローレンス
オープニングを派手に飾った二人がコンテで再登場。クリストファー・ウィールドン振付。
ピアノの生演奏で踊る二人。やっぱりコンテはよくわからない。
・「ライモンダ」ガリーナ・ステパネンコ&アンドレイ・メルクーリエフ
良くも悪くも「ロシアバレリーナ」らしいステパネンコ。スタイルは時代遅れだけど
見事な回転技は健在。時々手がはねる(反り返る)のが気になるけど。
・「春の声」アリーナ・コジョカル&ヨハン・コボー
ヨハン・シュトラウスのウィンナワルツ(オペレッタ「こうもり」の「春の声」)
にアシュトンが振付。この二人はABTのダンサーだと思ってたけどロイヤルだったのね。
それでアシュトン作品なわけだ。コジョカルはジュリエットのような衣装が良く似合う。
脚のラインがとてもきれい。紙吹雪を散らしながら踊ったから後で滑らないかとひやひやした。
<intermission>
・「カルメンアレッサンドラ・フェリ&ロバート・テューズリー
ビゼーの音楽にプティ振付。フェリの脚線美が見事。ジャンメール以来のプティのミューズ
も納得かも。あ、ラカッラがいるか。並みのダンサーにはこの作品は踊れない。
・「TWO」シルヴィ・ギエム
マリファント振付。「最後のボレロ」で日本初演。前回には気づかなかったことがいくつか。
照明で舞台上がせまい四角に照らされている。中心には影の四角があって、ギエムは
その中から出ない。ジャンプも回転もしない。伸ばされた手や足が影から光の中を
通るときにきらりと光る。勢い良く動くと残像となる。コンテでも面白いと思える作品。
今日一番の拍手と歓声。ギエムは人気があるからね。でも人気だけじゃなく実力もある。
カーテンコール3回。
・「ベジャールさんとの出会い」ジル・ロマン
ベジャール振付。サブタイトルが「オルフェ-ハムレット-ファウスト-孤独な男のためのシンフォニー」。
オルフェ(オルフェウス)らしく竪琴を持って登場。マントを持った男とスカルを持った
男が登場し、ジルにからむ。どうしてこの人が踊ると空間が違ってしまうのだろう。
劇場の空気が一変して、完全にジルの世界だった。派手なパフォーマンスをするわけでも
ないのに、自分の世界に観客を引きずりこんでしまう。すばらしい舞台だった。
・「マノン〜沼地のパ・ド・ドゥ」ディアナ・ヴィシニョーワ&ウラジーミル・マラーホフ
マラーホフに乾杯。ヴィシニョーワも頑張ったと思うけど、ギエムにはまだまだかなわない。
マラーホフがずいぶん助けていたと思う。拍手と歓声。カーテンコール3回。
・「ドン・キホーテ」ヴィエングセイ・ヴァルデス&ロメル・フロメタ
テクニックでは一番場内を沸かせたんじゃないかな。アダージオからやってくれました。
アラベスクで支え手を離してバランスが優に3秒以上。そしてまたロングバランスから
パッセを通ってドゥヴァンに。この間5秒以上。ただでさえドンキは派手なのに、のっけから
やってくれます。男性ヴァリエーションはやっぱりかっこよかった。ここぞとばかりに
派手な技を入れてきましたからね。女性のヴァリエーションではヴァルデスが扇を持っていなかった
のが印象的。普通は持つんだけどね。コーダはみせてくれましたよ。グラン・フェッテで
シングル-シングル-トリプルで前半持ってった。ちょっと音がずれてたけど、場内は
沸きまくってすごかった。フロメタも飛ぶわ回るわ、もう派手派手です。
最後を飾るのにふさわしい踊りでした。


フィナーレでは全員が登場してご挨拶。なんと5分間も拍手がなりっぱなしでした。