vol.10 バレエ「第11回世界バレエフェスティバル」Bプロ

「第11回世界バレエフェスティバル」Bプロ
出演:シルヴィ・ギエム、マニュエル・ルグリ、ジル・ロマン他

世界バレエフェスBプロです。今回は4時間の公演(うち休憩が計40分)。
Aプロが押しに押して終演予定よりも30分も遅れたせいか、めずらしく時間通りに
始まりました(バレエの公演は開演時間より10分ほど遅れて始まるのが慣例です)。
私の後ろにいた男性(振り返ったら結構若い人のようでしたが)がブラボーを連発
するので興ざめでした。しかも音楽がまだ終わってないのに、ダンサーが終わりのポーズを
決めるや否や叫ぶので余韻にひたることもできず。そのせいかAプロに比べて
あまり楽しめませんでした。たまにはbravaやbraviも言ってみろ。ナントカのひとつ覚え
みたいにブラボーブラボー叫べばいいってもんじゃないやい。
気を取り直して、若干辛口でレビュー行きます。


・「ディアナとアクティオン」ヴィエングセイ・ヴァルデス&ロメル・フロメタ
Aプロのトリで「ドンキ」を踊り場内を沸かせたペアが今度は幕開きです。
みんなあの興奮を覚えているのでアラベスクをすると「ロングバランスくるぞ」
って感じに身構えてました。そのせいか3秒や4秒バランスしても(十分すごいのに)
ドンキほどの歓声は聞こえず。コーダのグラン・フェッテでダブルやトリプルを混ぜながら
上手奥からセンターまで斜めに進み、そこから正面切って回ってました。フェッテ終わりに
フロメタのサポートが入ってから15回転も回して、大歓声。カーテンコールははじめから2回。
・「リーズの結婚」エレーナ・テンチコワ&フィリップ・バランキエヴィッチ
アシュトン版リーズ。最初のヴァリエーションは以前踊ったことのあるものだったので
なつかしく観ました。テンチコワさんはパンフには載ってないのね。可憐でかわいかったけど、
最後のアレグロで足先が伸びきってないのが気になりました。
・「幻想−『白鳥の湖』のように〜第1幕のパ・ド・ドゥ」ジョエル・ブーローニュ&アレクサンドル・リアブコ
ハンブルクのペア。ノイマイヤーは肩を落とした衣装が好みなのかな?椿姫と同じタイプ。
しっとり情感のある踊り。王の幻想が通奏テーマらしい。
・「海賊」イリーナ・ドヴォロヴェンコ&ホセ・カレーニョ
カレーニョのジャンプがすばらしい。何あの滞空時間の長さ。女性のヴァリエーションは
回転ばっかりのバージョンだった。フィッシュダイブをキレイにきめてます。
<intermission>
・「ロミオとジュリエット〜バルコニーのパ・ド・ドゥ」マイヤ・マッカテリ&デヴィッド・マッカテリ
兄妹で「眠り」やら「ロミジュリ」やら。向こうの人は気にしないのかな。
バルコニーのセットはAプロと同じ。これはラヴロフスキー版。初めて観た。パンフでは
マクミラン版を踊ることになってたんだけどね。ロミオはマントなしで登場するし
ジュリエットはさっさと階段を降りてきて二人で踊りだします。きれいなPDD。
・「カルメンガリーナ・ステパネンコ&アンドレイ・メルクーリエフ
古典じゃないステパネンコは初めて観た。でもアロンソの振付だからもはや古典なのかも
しれない。意外と良かった。古典以外も踊れるんじゃん、姐さん。年上の悪女に惚れちゃった
ぼくちゃんって感じ。ハバネラはカルメン、間奏曲はドン・ホセ、そして二人でアダージオ。
・「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」アリーナ・コジョカル&ヨハン・コボー
ジュリエットドレスが良く似合うコジョカル。後ろの男が「かわい〜」とうるさい。
コボーのヴァリエーションはAプロで「黒鳥のグラン・パ」を踊ったカレーニョが踊った
のと同じ。バランシン・バレエを良く踊っていた。その証拠にCC3回。
・「白鳥の湖〜黒鳥のパ・ド・ドゥ」ポリーナ・セミオノワ&フリーデマン・フォーゲル
セミオノワはジュリエットよりオディールのほうが合ってるかも?姫系が似合うんだろうな。
長い手足を存分に生かしたPDD。オディールのヴァリエーションはハープが鳴ってから
オーボエでルルヴェ・アラベスクで始まるほう。コーダのグラン・フェッテでは前半を
オールダブルで通した。テクニックは問題ないと思うけど、もう少し表現力がほしかったかな。
CC3回。
<intermission>
・「眠れる森の美女」ルシンダ・ダン&マシュー・ローレンス
小さなミスが何箇所かあった。そのたびに後ろの男が「ああ」とか「おっ」とかうるさい。
振付にいくつか手が入っていたのはオーストラリア版ということ?はじめて見た。
・「椿姫〜第2幕のパ・ド・ドゥ」オレリー・デュポン&マニュエル・ルグリ
ノイマイヤー振付。生ピアノ。まだ幸せな二人。白の肩を落としたドレス。CC3回。
・「ジュエルズ〜ダイヤモンド」ディアナ・ヴィシニョーワ&ウラジーミル・マラーホフ
Aプロのパリ・オペのペアに比べるとやや気品に欠ける。わざとらしい派手さが目に付く。
バランシン・バレエは端正に踊ってほしい。もったいない。ダイアというよりゴールドの
ような衣装。他からの転用?CC3回。
・「孤独」ジル・ロマン
シャンソンに振付けた「ブレルとバルバラ」のアレンジバージョン。私の集中力が
とぎれて少し眠たくなった。でもジルの世界はすごいんだよなぁ。誰も真似できない。CC3回。
・「椿姫〜第3幕のパ・ド・ドゥ」シルヴィ・ギエム&ニコラ・ル・リッシュ
眠気なんて完全に吹っ飛んだ。病に冒されても愛を貫くマルグリット。黒のドレスを
脱いだときに結い上げた髪がほどける演出がとても効果的だった。切なくて切なくて
涙がでそうになった。生ピアノ。CC4回。
<intermission>
・「ドリーブ組曲」アニエス・ルテステュ&ジョゼ・マルティネス
コッペリア」と「泉」から音楽を借りてジョゼが振付けた作品。確か前回のバレエフェスでも
踊られたんだけど、アニエスの具合が悪くてアダージオだけになった記憶がある。
衣装デザインはアニエス。青がとてもよく映える。実に美しい二人。CC3回。
・「三人姉妹」タマラ・ロホ&イナキ・ウルレザーガ
マクミラン振付。演技派な面を見せるための演目?でも古典でテクニックを見せている
ほうがキャラに合っているような。切ない恋の表情は良く出ていた。CC3回。
・「マノン〜沼地のパ・ド・ドゥ」アレッサンドラ・フェリ&ロバート・テューズリー
今まで観たマノンの中で一番儚げだった。もう一度観たい。CC4回。
・「ドン・キホーテレティシアオリヴェイラ&ズデネク・コンヴァリーナ
Aプロではエスメを踊ってテクニックを披露したペアがドンキで登場。王道を行くドンキ。
4秒以上のロングバランスとかしてもAプロほど観客が盛り上がらないのは残念。
グラン・フェッテではダブルのときに手にした扇を開いてすぐ閉じるという技を入れてきた。
いろんな見せ方があるけど、小道具を使うのって実はすごく難しい。ダブルを回っている
短い時間にぱっと開いてすぐ閉じるというのはとても確かなテクニックがある証拠。CC3回。


フィナーレでは女性の名前順に全員が登場してご挨拶。お疲れ様でした。