台風

台風とは、トロピカル・サイクロンのうち中心付近の最大風速が34ノット以上のもの、と定義されています。また中心付近の最大風速が34ノット未満のものは、熱帯低気圧と呼ばれます。両者の違いは、中心付近の最大風速が34ノットという閾値以上か以下か、という点だけです。

  • 台風の寿命

台風の寿命、すなわち台風の継続時間の定義には複数の可能性があります。というのも、台風がいったん熱帯低気圧に衰えたあと、しばらくして再び台風として復活することがあり、その期間をどう扱うかで台風の寿命が変わってきてしまうのです。

「台風は温帯低気圧に変わりました」という表現は、実は台風の強弱の変化を指す場合ではなく、台風の構造の変化を指す場合に使う表現です。具体的には台風の構造が、熱帯低気圧(tropical cyclone)の構造から温帯低気圧(extratropical cyclone)の構造へと変化した場合に使います。ほとんどの場合、この変化は後戻りしません。


一方、これと似た表現である「台風は熱帯低気圧に変わりました」は、台風の構造の変化ではなく、台風の強弱の変化を指す表現です。具体的には、中心付近の最大風速が台風の最低基準を下回った場合に使います。最大風速がたまたま基準を下回っただけですから、熱帯低気圧から台風に復活することもあります。


このように、台風から温帯低気圧への変化は構造の変化を意味し、台風から熱帯低気圧への変化は強弱の変化を意味します。この違いを理解すれば、「台風は熱帯低気圧に弱まった」という表現はおおむね正しい(注2.1)けれども、「台風は温帯低気圧に弱まった」という表現は正しくないことがわかります。「台風は温帯低気圧に強まった」という場合も少なくないのです(例えば台風200418号)。
(注2.1)これも正確には風が弱まったことしか意味していないので、雨が弱まったかどうかは関係ないことに注意しておく必要があります。



「デジタル台風:台風(熱帯低気圧)の定義とその一生」より