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熊本震度7 長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で
気象庁が予測発表を検討している「長周期地震動」ってどんな揺れ?




熊本震度7 長周期地震動の「階級4」を国内初観測 震度6強の余震で
産経新聞 4月15日(金)6時24分配信
 熊本県益城町で14日夜に発生した震度7地震で、気象庁は15日、同県宇城市で発生した震度6強の余震で、長周期地震動の「階級4」を観測したことを明らかにした。平成25年3月に長周期地震動の観測が試行されて以来、国内初。
 気象庁によると、15日午前3時までに発生した余震は計75回。うち午前0時3分に宇城市で発生した震源の深さ約10キロ、推定マグニチュード(M)6・4の最大余震は、同市内の地震計で長周期地震動が4段階中最大の階級4を観測した。
 長周期地震動は、大規模な地震で発生する周期の長い揺れで、高層ビルなどの高い建物に大きな揺れを生じさせる。
 同庁によると、熊本県熊本地方では長周期地震動の観測点が5カ所あり、そのうち宇城市の1カ所で階級4が観測された。同庁の青木元地震津波監視課長は「震源が浅く規模が大きかったので長周期地震動も大きくなった。今後も余震活動が活発な状態が続くので長周期地震動にも注意が必要」と呼びかけた。
最終更新:4月15日(金)7時55分


気象庁が予測発表を検討している「長周期地震動」ってどんな揺れ?
2016.03.23 12:00
 東日本大震災が発生した日、高層ビル内にいた人の中には、ゆっくりとした大きな揺れがなかなかおさまらなかったことを覚えている人も多いのではないだろうか。このように、数秒以上の周期の大きな揺れが分単位で続く地震動のことを、「長周期地震動」と呼んでいる。気象庁は現在、長周期地震動の予測情報の発表を検討しており、17日にも検討会が開かれた。あらためて、この長周期地震動についてまとめた。


規模が大きな地震ほど大きく、震源が浅いほど伝わりやすい
 長周期地震動にみまわれると、高層ビルでは、くりかえされる揺れによって室内の家具や什器、キャスター付きの机などが転倒したり、エレベーターが故障することもある。特に、低い階層よりも高い階層で揺れが大きくなる傾向にある。
 東京消防庁東日本大震災の後で行った東京都内でのアンケートで、建物の階層別に家具類の転倒・落下・移動の発生状況を尋ねたところ、1〜2階は16.8%の住居で発生したとの回答があったが、階が上がるごとに増え、11階以上では47.2%と半数近くとなった。
気象庁では、長周期地震動を揺れの大きさに応じて、次の4つの階級に分けている。
・階級1 ブラインドなどの吊り下げたものが揺れる。室内にいるほとんどの人が揺れを感じる。
・階級2 室内で大きな揺れを感じ、物につかまりたいと感じる。棚にある食器や書籍が落ちることがある。
・階級3 立っていることが困難になり、キャスター付きの家具が大きく動いたり、固定していないものも移動し、不安定なものは倒れることがある。
・階級4 立っていることができず、はわないと動けない。揺れに翻弄される。キャスター付きの家具が大きく動き、転倒することがある。固定していないほとんどの物が移動し、倒れるものがある。
 揺れの強さは、短い周期の波に比べると減衰しにくいことから、遠くまで被害がおよぶことがある。東日本大震災の際、最大で階級4となった地域は、宮城県北部・南部、中部といった震源地の近くに加え、東京都23区や山梨県東部・富士五湖静岡県東部といった東京以西の地域も含まれていた。
最大で階級2となった地域にまで目を向けると、滋賀県南部や大阪府北部・南部、兵庫県南部といった近畿地方にまで及んでいる。大阪市内の高層ビルでは、エレベーターに人が閉じ込められる事故などが起こった。大阪の震災当日の最大震度は3だったという。
 長周期地震動の揺れは、マグニチュードが大きな地震ほど大きく、震源が浅いほど伝わりやすいとされる。首都圏のある関東平野などの大規模な平野や盆地を覆う柔らかな堆積層は、長周期地震動の波をよく伝え、また強める働きもあるという。
 日頃の対策としては、家具の固定や、エレベーターの停止に備えた食品などの備蓄などが考えられる。発生時には、家具や照明器具が「落ちこない・倒れてこない・移動してこない」安全な場所に身を寄せてしのぐことが求められる。今後、検討会では、予測情報の際に呼び掛ける適切な行動の中身や、発表の方法、開始時期も含めて議論を進める。
 気象庁によると、平成12年(2000年)から平成28年(2016年)2月までの約16年間に、最大で階級3を観測した地震は26回(東日本大震災当日は本震のみをカウント)、ばらつきはあるだろうが、だいたい2年に3回は起こる計算になる。こうした頻度を念頭に置き、地震発生時には、たとえ震源から遠く、震度がさほどではない場合も油断は禁物、と肝に銘じたい。
(取材・文:具志堅浩二)